新しく買った新品の革靴。スニーカーと違い、革靴は最初にコーティングしておく必要があります。この履きおろしの儀式をするかしないかで、革靴の寿命は大きく変わると言ってもいいでしょう。
とは言えやることはとてもシンプルで、基本的には「クリームを塗ること」と「防水スプレーを振ること」だけです。このページでは、この2つの作業を行うための正しい手順について解説します。
せっかく買った新品の革靴を長く愛用するため、ぜひ知っておきましょう。
目次【本記事の内容】
- 新品の革靴お手入れに必要なもの
- 新品革靴の手入れ1:靴紐を外してシューキーパーを入れる
- 新品革靴の手入れ2:革靴全体を軽く拭く
- 新品革靴の手入れ3:クリームを塗る
- 新品革靴の手入れ4:全体にクリームを浸透させる
- 新品革靴の手入れ5:防水(撥水)スプレーを振る
- さいごに:なぜ新品の革靴にお手入れが必要なのか
- さいごのさいごに:履きおろし前に皺を無理矢理作る必要はない
新品の革靴お手入れに必要なもの
・「綿100%の布」(いらなくなったTシャツでも代用可能)
・「シューツリー / シューキーパー」(新聞紙でも代用可能)
・「乳化性シュークリーム」または「デリケートクリーム」
・「化繊(豚毛)ブラシ」
・「靴用防水スプレー」
【あれば便利なもの】
・「馬毛ブラシ」
・「ペネレィトブラシ」
・「グローブクロス」(ストッキングでも代用可能)
新品革靴の手入れ1:靴紐を外してシューキーパーを入れる
新品の手入れの場合、革靴の紐は外しておくことをおすすめします。今後、定期的な手入れのたびに毎回靴紐を外すのはさすがに面倒ですが、最初の一回目に関しては紐を通す羽根裏やシュータンなどの細かい部分まで確実にクリームを塗っておきたいので、邪魔となる靴紐は外しておきましょう。
また、余計な型崩れを防止するためにシューツリーかシューキーパーをセットしましょう。無ければ新聞紙でも代用できますが、革靴を長く愛用するならシューツリーは必須アイテムなので、早めに用意したほうがいいです。プラスチック製のシューキーパーより、木製の「シューツリー」のほうが汗などの水分を吸収する効果があるのでおすすめです。
新品革靴の手入れ2:革靴全体を軽く拭く
まずは綿100%の布で、靴全体の塵や埃を落としましょう。とは言っても新品なので、軽く乾拭きするぐらいで問題ないです。
この段階では必須ではないですが、「馬毛ブラシ」があればソール(コバ)の隙間や細かい縫い目まで行き届きます。靴を履いたらその都度サッと馬毛ブラシで汚れを払うことを習慣付けておくと、こまめに手入れしなくても汚れが蓄積されません。
古いクリームや汚れを落とす「ステインリムーバー」などのクリーナーに関しては、新品の段階では不要です。
新品革靴の手入れ3:クリームを塗る
ここでいよいよクリームを塗り、革に必要な水分や潤いを補給します。革靴用の「乳化性シュークリーム」や「デリケートクリーム」を用意しましょう。色は革靴の色に合わせたものでもいいですが、無色のニュートラルタイプであればどんな靴にも対応できます。
クリームのメーカーは「モゥブレイ(M.MOWBRAY)」が断然おすすめ。シュークリームかデリケートクリームどちらを使うかですが、革靴愛好家はシュークリームを使う場合が多いです。シュークリームは蝋が含まれているため、美しい光沢が現れるのが特徴です。
デリケートクリームは水分が多く、革製品全般に使えるほど革に優しいです。油分が少ないので色ムラにもなりにくいですね。革靴以外のレザー製品もケアできるクリームを求めるなら、デリケートクリームが良いでしょう。
クリームを塗る量ですが、これは大量に塗るほど効果的というものではありません。むしろ塗りすぎは禁物です。目安としては、お米2〜3粒程度が片足分の適量とされています。布で伸ばしながらまんべんなく丁寧に塗りましょう。このとき「ペネレイトブラシ」があれば、縫い目やメダリオン(飾り穴)など細部まで素早く塗ることができます。
新品革靴の手入れ4:全体にクリームを浸透させる
クリームを塗ったあと、革の繊維にクリームが染み込むまで30分放置します。実はこの「何もしない30分」こそが手入れでは大事。きちんと革の毛孔にクリームを浸透させずに仕上げを行うと、たとえ一時的にぴかぴかになっても汚れが革の毛孔に詰まりやすくなります。
30分ほど放置すると、脂分が染み込んでクリームを塗った当初よりも革靴の光沢がなくなっているはず。そうなれば次の工程に入ってもOKです。
毛並みの堅い「化繊(豚毛)ブラシ」を使って、革靴全体をブラッシングしましょう。決して強くこすらず、軽くまんべんなくブラシをかけていきます。これにより、余分なクリームを落とし、クリームがムラなく革靴全体に行き届きます。このブラッシング作業は時間をかけて行う必要があるので、実際にやってみるとブラシの長さが15cm以上必要なこと、そして長方形でなければならないことを痛感できるはずです。
グローブクロスで仕上げればピカピカに
最後に目の細かい布を使って、やや強めに磨き上げることで革靴に美しい光沢が宿ります。このピカピカになっていく様子が、手入れのなかで最高に気持ちいい瞬間。この喜びを知れば、面倒なはずのお手入れがやみつきになること間違いなしです。
この仕上げの工程では、「グローブクロス」を使うのが便利です。ナイロンストッキングがある場合は、手にきつく丸めて磨いても同じように綺麗な艶が出ます。
新品革靴の手入れ5:防水(撥水)スプレーを振る
仕上げに「防水スプレー」で革靴の天敵である雨対策をしておきます。通気性の良い場所で一晩陰干しすれば、いよいよデビューです!
基本的に普段のシューケアも同じ流れで行いますが、防水スプレーは毎回振らなくてもOKです。
さいごに:なぜ新品の革靴にお手入れが必要なのか
なぜわざわざ新しい靴にクリームを塗らなければいけないのかというと、新品の革靴はほとんど「すっぴん」状態だからです。革靴をつくる工程ではもちろんクリームでコーティングされていますが、出荷からお店のストックという工程を経て、自分の手元に来る頃にはすっかりコーティングは弱まっています。
クリームで防御されていない革靴は、ひび割れや色ムラの原因になります。劣化スピードが恐ろしく早くなるわけですね。これらのリスクを避けるため、履きおろしの前にクリームを塗る儀式が必要となるのです。
さいごのさいごに:履きおろし前に皺を無理矢理作る必要はない
インターネットの乱立する情報のなかには、履きおろしの前にボールペンの腹を押し付けて「履き皺」をつけたり、ソールを2つ折りになるぐらい折り曲げて「反り」をつけておく方法が新品の儀式として紹介されているものがあります。しかしこれらの方法はおすすめできません。
なぜなら、履き皺などは自然につくものが一番美しいですし、もし異様な履き皺がついたのだとしたら、それはサイズの大きい靴を買ってしまったということです。そもそも履き皺もソールの返りも、ボールペンや力技で無理矢理作って、不自然なものになってしまったら目も当てられません。ある程度の皺を楽しむのはむしろ革靴の醍醐味です。
もちろん汚れや雨、ひび割れなどには定期的な手入れでしっかりと対策するようにしましょう。