革靴のソールを付ける製法は、細かく分けると10種類以上にも及びます。その中でも主流となっているのが、グッドイヤーウェルト製法、マッケイ製法、セメント製法の3つ。
このページでは、それぞれの製法が持つ特徴やメリットについて解説。革靴は製法によって寿命や履き心地が大きく変わるので、自分の用途に適した作りのものを選びましょう。
グッドイヤーウェルト製法
英国靴に多く見られるグッドイヤーウェルト製法の革靴は、堅牢性と質実剛健なデザインが魅力。
グッドイヤーウェルト(グッドイヤーウェルテッド)製法とは、アッパー(靴の上部)とソール(靴底)を直接縫いつけるのではなく、ウェルトという部品を介して縫合する製法のことです。18世紀に米国で開発され、その後イギリスで発展しました。
・履くごとに自分の足型にフィットする
・修理できるので長年に渡って履ける
・耐久性が高い
・重さがあるため歩行がラク
・履き始めは堅い
グッドイヤーウェルト製法の場合、アウトソール(靴底の地面に接する側)の取り外しが可能となります。そのため、靴底が消耗したタイミングで、オールソールと呼ばれる付け替え修理ができるというのが大きなメリット。
定期的なアッパーの手入れさえ怠らなければ、10年以上履き続けることも可能です。一般的な革靴よりも高価なものが多いですが、1万円の革靴を2年前後で履き潰してしまうことを考えると、コストパフォーマンスは優れています。また、長年愛用することで、革の経年変化による味わいを楽しめるのも魅力。
ソールの中にはコルクが敷き詰められており、履くごとに足の形に合わせて沈み込みます。最終的には自分仕様の革靴として、足を包み込むような履き心地になります。
丈夫で重さがあるのも特徴。一定の重量があることで、足が振り子の原理のように前へ前へと送り出され、歩行の疲労感を軽減します。
靴底部分の「コバ」が張り出しているのもグッドイヤーウェルト製法ならでは。本格的な靴好きのあいだでは評価は分かれるものの、一般的にはこのコバは「グッドイヤーウェルト製法 = 高級靴」であることの証明。街行くサラリーマンを観察すればよく分かりますが、ほとんどの人はコバの出ていないセメント靴です。そのため、グッドイヤーウェルト製法の革靴というだけである意味周囲と差別化が図れるのです。
ただ、履き始めの硬さは苦労します。機械を使用するグッドイヤーウェルト製法では、靴の内部に「リブ」や「シャンク」といったパーツが内蔵されているため、革靴の”返り”も他の製法に比べて悪いです。馴染んでしまえば快適な履き心地になりますが、それまでの1〜2ヶ月は苦労するでしょう。ちなみに、修理した場合はインソール(靴底の足裏に密着している側)を残してもらえるので、靴を”再教育”する必要はありません。
一般的な革靴よりも一足の値段は高め。国産ブランドの低価格モデルであれば、3万円前後で購入できます。
マッケイ製法
革靴の各パーツをまとめて縫うマッケイ製法は、見た目と履き心地の軽快さがメリット。
マッケイ製法(別名 : ブレイク製法)とは、アッパー、ライニング(内部側面)、インソール、アウトソールを一気に縫い合わせる製法です。靴の内部を覗くと縫い目が見えるのがこの製法です(中敷で隠れている場合もあります)。
・見た目がスマート
・軽い
・履き始めから苦労しない
・数回なら修理可能
グッドイヤーウェルト製法のように重厚な作りではないため、靴自体が軽やかです。軽さを長所と取るかは人それぞれですが、軽快に履きこなしたいならマッケイ製法は間違いありません。
コバが薄く、見た目のスマートさも特徴。しかし、外見的にはセメント靴と変わりがないので、そういった意味で高級感をアピールしたい人には物足りないかも知れません。好み次第ですが、スマートに履きたいホールカットやローファーなどの革靴は、マッケイ製法が適しているかと思います。
マッケイ製法もオールソール修理は可能。ただし靴の耐久性が徐々に低下するため、3回程度が限界と言われています。とは言え、ラバーで靴底を補強するなどの対策をしながら大事に履けば、かなり長く愛用できますね。
マッケイ製法が優れている点としては、新品の状態から履きやすいところ。靴の返りも良く、足を痛める可能性も低めです。
洗練された見た目を重要視するイタリア靴やスペイン靴で多く採用されているマッケイ製法。価格もさまざまで、10万円を軽く超えるものもあれば、1万円以下で手に入るモデルもあります。
セメント製法
接着剤によって作るセメント製法の革靴は、価格の安さが特徴です。
セメント(セメンテッド)製法とは、文字通り糸を用いた縫合ではなく、接着剤によって各パーツを張り付けた製法です。現在流通している革靴の大半がこの製法で作られています。
・価格が安い
・見た目上は本格的な革靴と変わらないものも
技術的レベルが高くなく、大量生産に向いているため価格が安いのがセメント製法の魅力。見た目を意識しないのであれば、数百円で売られている革靴もあります(コッペパンみたいなやつです)。
セメント製法で2万円前後のものとなると、見た目上はマッケイ製法の高級イタリア靴とほとんど変わりがないものも。実際、よほどの愛好家でもない限りこれらの違いを見極めるのは困難です。
オールソール修理は原則不可能なので、靴底が駄目になったら買い換えるというのが一般的な考え方となります。