それなりの値段がする革靴を買うと、長く愛用したいと思うものですよね。合成皮革の靴であれば履きつぶす前提なので手入れはしませんが、牛革素材のものは状態を保ち続けるために定期的な手入れが不可欠です。革靴に必要な手入れとは、ひと言で言ってしまうと、乳化性のクリームを塗って磨くだけのことなのです。
しかし、手入れをしたことがない人からすると、どのクリームを買っていいか迷ってしまう人も少なくないでしょう。筆者はかつて、サフィールのポリッシュワックスを靴磨き用のクリームだと思い込み、丹念に塗り込んでいた時期がありました。大きな過ちに気づいたのは、その革靴にひび割れが出てきたあとの話です。
本記事では、東急ハンズに無数に並ぶクリームのなかからどれを選んでいいかわからない人のために、5段階の必要度を用いながら、手入れに使用するクリームをわかりやすく紹介します。
革靴を長持ちさせるための栄養補給用乳化性クリーム
シュークリーム(必要度★★★★★)
これこそが、手入れに必要不可欠な乳化性の「シュークリーム」です。シュークリームに含まれる水分と油分が、皮革の栄養となり、ひび割れや劣化を防ぎます。また、成分のなかにロウが含まれるため、クリームを塗ったあとに磨くと革靴全体に美しい光沢が出ます。
モゥブレイ(M.MOWBRAY)というメーカーのものがおすすめで、革靴の色に合わせて黒や茶色のクリームを選んでもいいですが、無色透明のニュートラルタイプであればどんな靴にも万能に使えます。
デリケートクリーム(必要度★★★★★)
シュークリームと同じく、革靴の潤いや栄養補給を目的とするのが「デリケートクリーム」です。シュークリームとの違いですが、水分が主体となっており、靴以外の革製品にも使用できるほど皮革に優しいです。シュークリームよりもデリケートクリームのほうが伸びがよく、塗りやすいメリットがあります。
しかし、ロウが含まれていないため、磨いたあとの光沢はシュークリームよりもマットに仕上がります。
シュークリームかデリケートクリームどちらかひとつあれば充分ですが、革靴以外のレザー製品にも使えるクリームが欲しいという場合はデリケートクリーム、革靴専用で光沢感が欲しい場合はシュークリームといったように、使い分けたり併用してみるのもおすすめです。
上の写真のものは、デリケートクリームの上位互換である「リッチデリケートクリーム」です。Amazonでの取扱いが少なく、品切れの場合も多いので、筆者は東急ハンズで購入しました。
革靴に蓄積された汚れを落とすためのクリーム
ステインリムーバー(必要度★★★★)
革靴の手入れは、革に乳化性クリームを入れることですが、その前に汚れを落とさなければいけません。ブラッシングによって革靴に付着した汚れを払い落とすことはできますが、あまりに汚れがひどいときは「ステインリムーバー」の出番です。布にステインリムーバーをほんの数滴垂らし、全体に引き伸ばしたあと、別の布で綺麗に汚れを拭き取ります。こうすることで、汚れが蓄積されている古いクリームまで根こそぎ落とすことが可能です。
革靴に光沢を持たせるおしゃれ用クリーム
ポリッシュワックス(必要度★★★)
上記のシュークリーム以上に、革にツヤや輝きを出したい場合に使うのが「ワックス」です。鏡面仕上げと言って、つま先やかかとなどに、このワックスと水滴を使って磨き上げることで表面がツヤツヤになります。注意点としては、栄養を与えるシュークリームと違って、ワックスは皮革の呼吸を奪うので、全体に塗りこんだり過剰に使用してはいけません。あくまでドレスアップ用の「化粧品」と考えましょう。
冒頭で触れたサフィールのワックスが以下です。色のバリエーションも豊富で、用途さえ間違えなければ優れた製品です。
レザーソール用や補修用など、あれば便利なクリーム
ソールモイスチャライザー(必要度★★)
レザーソールの場合、履いているうちに皮革が磨り減り、ちょうどつま先あたりの部分から起毛してきます。レザーソールの革靴は、大抵の場合グッドイヤーウェルト製法やマッケイ製法でてきているので、消耗すれば交換が可能ですが、多少の傷みなら自分で治したいところですよね。「ソールモイスチャライザー」をソールに塗り、レザースティックで逆毛立った部分を押し付けることで、レザーソールが回復します。
そのレザースティックですが、このどこにでもありそうな物体の割に、7,000円というとんでもない金額です。
さすがにこの値段はアホらしいので、同じ水牛の角でできた、マッサージ用具で代用しましょう。おもしろいことにこのマッサージ用具のレビューを見ると、ほとんどの人が本来の用途ではなく、レザーの補修用に購入していることがわかります。
補修クリーム(必要度★)
ひび割れや傷が入った場合は、ヤスリと「補修クリーム」で修繕を試みます。勘違いしてはいけないのは、補修クリームは傷を「治す」ものではなく、「塗りつぶす」ためのものです。背景と同じ色の絵の具で同化させるようなイメージですね。サフィール製の補修クリームが色のバリエーションが豊富です。革靴に近い色を選びましょう。
しかし、不慮の接触でついてしまった傷ならばともかく、ひび割れに関しては、手入れさえきちんとしていれば未然に防げるものです。できることなら、補修クリームを使うような状況は避けたいものですね。
まとめ:革靴を長く愛用したいなら乳化性クリームは必須
新しい革靴を買ったにも関わらず、乳化性クリームをひとつも持っていないなんてナンセンスです。必ずシュークリームかデリケートクリームは最低限常備しておきましょう。革靴は履けば履くほど自分の足のサイズに合ってきますし、愛着も湧きます。その分、傷やひび割れをつけてしまったときのショックは計り知れません。
補修クリームで処置できるとはいえ、補修作業はやはり神経をすり減らします。ちなみに本記事では数々のクリームをおすすめしましたが、その気になればシュークリームひとつあれば革靴の手入れは充分事足ります。
日々の手入れを怠らず、皮革を常に万全なコンディションにしておくのが長く革靴を愛用する秘訣ですね。