結婚式で着るスーツ、どうせならお洒落に着こなしたいですよね。しかし、フォーマルシーンでのスーツスタイルは、気をつけるべきマナーが多いです。かと言って、ルールに怯えすぎて黒スーツに白ネクタイなんかで参加するとオジサン臭くなってしまいます。主張しすぎず、それでいて地味になりすぎず、マナーの範囲内でコーディネートしてこそ本当のお洒落と言えます。本記事では、結婚式でのスーツマナーと、フォーマルスタイルに相応しい着こなしについて徹底的に網羅しています。恥ずかしくない格好で結婚式を彩り、新郎新婦を気持ちよくお祝いしてあげましょう。
結婚式のお洒落は服装マナーを知ることから始まる
おしゃれな着こなしとは、費やした金額によって決まるようなものでは断じてありません。紺地に白ストライプの、グッチのスーツに身を包み、ジョンロブのメダリオン(飾り穴)が施された革靴を履いて結婚式に出席する男性は、「お洒落」ではなく「下品」です。だからと言って、洋服の青山の7000円の礼服でもいいかと言うとそういう話でもありません。結婚式というフォーマルなシチュエーションでのマナーをしっかりと意識し、そのルールを守ったうえで上品にドレスアップしてこそ「洒落者」です。マナーと言っても、法律のように難しい話ではありません。結婚式に関して言えば、「主役である新郎新婦よりも目立とうとしてはいけない」という、根底にある鉄則さえ知っておけば、どのようなスーツや革靴が相応しいのかが理解しやすくなります。
濃紺、グレーのスーツは世界共通のフォーマルスタイル
結婚式では、ビジネススーツの黒よりもさらに深い漆黒のブラックスーツこそが礼儀正しい服装とされてきました。今でも50代以上の年配の人は、ダブルのブラックスーツに身を包んで出席する姿が多く見られます。しかしこれは日本古来の着物文化から由来するもので(諸説あり)、日本独自のフォーマルマナーです。最近の結婚式は西欧のスタイルが取り入れられ、ネイビーやグレーのダークスーツもフォーマルスタイルの正しい服装として広まっています。
本来、結婚式用のスーツは専用のものを作るのが理想です。しかし、そう頻繁にあるものではないイベントのために高級なスーツを拵えるのも気が引けるのが現実です。ブラックスーツと違い、ネイビのスーツは汎用性が高くビジネス用としても使用できる上に、コーディネートも黒のように重たい印象になりません。最近は明るめのネイビーが人気で、テレビドラマでも俳優がこぞって着用していますが、あまりに明るすぎたり、光沢が強すぎるものは、結婚式では思いとどまったほうがいいでしょう。
スーツの本場、イギリスの結婚式ではグレーのスーツが多く着られます。かっちりしたシルエットのチャコールグレースーツは、大人の色気を存分に発揮できるでしょう。ただし、グレーの場合は特に、明るすぎるものは新郎の衣装と近いものになる恐れがあるので要注意です。白に近いようなライトグレーは避けるようにしましょう。
スーツの柄は無地を選ぶのが礼儀
ストライプは、生地の織り柄に入ったシャトーストライプ以外はNGです。これも、「主役である新郎新婦よりも目立とうしてはいけない」という鉄則から来ている考え方です。生地色と違う色が使われたピンストライプやペンシルストライプは控えましょう。ストライプスーツは、スタイリッシュに見えるので確かに仕事で使うスーツとしては人気がありますが、ネイビーやグレーのソリッド(無地)スーツの、洗練された美しさはなかなか捨てたものじゃありません。
ジャケットやベストの着こなしにも品格が求められる
まれに、「フォーマルシーンや顧客向けのプレゼンなど、かしこまった場ではスーツのボタンは全て留めるのがマナー」と考えている人がいるようですが、とんでもない間違いです。ジャケットの一番下のボタンは必ず外しましょう。これはファッションではなく、ルールの話です。また、スーツには2つボタンのものと3つボタンのものがありますが、どちらの方が格式が高いということはありません。今は2つボタンが主流なのでそちらを選ぶのがいいでしょう。
また、結婚式のようなイベントでは積極的にベストを着るようにしましょう。本来、「ワイシャツ=下着」という考えがスーツスタイルの根底にあり、ビジネスならともかくフォーマルシーンではそのようなクラシックスタイルの装いが尊重されます。ベスト着用時はジャケットのボタンは留めず、ベストの一番下のボタンもやはり外しましょう。
夏にベストは季節感がないのではないかと考えるかも知れませんが、むしろ夏こそベストが必要です。炎天下でジャケットを脱いだ場合、ベストがない状態では、下着姿で歩き回るのも同然です。ベストを着用していれば、上着を脱いでもマナー違反にはなりません。
仕事用のネクタイを結婚式に巻いていくのは紳士失格
上の写真のような、いかにも仕事で使い古しているようなレジメンタルストライプのネクタイで結婚式に出席するのは、招いてくれた新郎新婦に対して失礼です。スーツを新調しろとまでは言いませんが、ネクタイぐらいは結婚式用のものを用意するのが新郎新婦への祝いの気持ちというものです。
色はある程度自由ですが、無難なのはシルバーです。フォーマル用の光沢感がある生地のネクタイを選び、一緒に同じ色のポケットチーフも買いましょう。もし同じ色のポケットチーフがないなら、白のチーフを胸ポケットに挿せばOKです。また、ネクタイは必ずしも光沢のあるものを選ぶ必要はなく、ネイビーのドットタイでもいいです。クラシックスタイルの伝道師、落合正勝氏はこう語ります。
「濃紺のスーツに白いシャツ、紺地に小さな白の水玉のタイ、黒のストレートチップを履けば、服装指定がないかぎり、世界中のどこのパーティでも通用する。」
また、襟が広めのワイドスプレッドカラーのワイシャツを選び、ネクタイをダブルノットなど、結び目が大きくなる巻き方をすれば、Vゾーンがとても美しく見えます。襟自体にボタンがついているボタンダウンシャツは、カジュアル向けなので選んではいけません。大手のスーツチェーンがドレスシャツとしてボタンダウンのワイシャツを売っていますが、あれは大嘘もいいところなので騙されないようにしましょう。
カフスやラペルピンなどのアクセサリーはさり気なく
アクセサリーや小物で着飾るのもフォーマルシーンならではです。しかし、つけすぎには気をつけましょう。カフリンクス、タイバー、タイリング、ラペルピン、これら全てをつけると、さすがに「気合い入りすぎている感」が出てしまいます。マナー違反というわけではないですが、過剰なドレスアップは逆にみっともないですね。アクセサリーはさりげなく、袖口からカフリンクスがチラッとみえるぐらいがちょうどいいでしょう。
革靴に人間性が宿る
ジャストサイズのスリーピーススーツを着こなし、上質なシルクのネクタイを巻いていても、革靴が数千円の、コッペパンみたいなものでは台無しです。実は、お洒落な男女ほど最初に相手の靴を見ます。大昔から言われていることですが、靴は、履いている人間の性質をそのまま反映するからです。手入れのされていないくすんた革靴を履いていれば、だらしない人間だと思われますし、かかとか削れているようでは、身近にそれを注意してくれるような女性がいない、もしくは結婚していたとしても感心を持たれていない男なのだという烙印を押されてしまいます。よって、大前提として、結婚式に履いていく革靴は前日までにクリームを入れてピカピカに磨くのが必須です。さらにかかとがすり減っているなら、会社帰りにでもリペアに出しましょう。30分で済みますし、3,000円あれば新しいヒールに交換してもらえます。
そしてフォーマルにもっとも相応しい革靴は、黒の内羽根ストレートチップです。これは揺るぎません。プレーントゥでも問題ないですが、茶色や、紐靴でないもの、メダリオンなどの装飾があるものは避けましょう。殺生を連想させるスエードもNGです。
同じストレートチップでもやはりお金をかけるほど質は上がり、ソールひとつにしてみても、20,000円以下の靴は大抵セメントで張り付けただけのものですが、50,000円前後のものになると、グッドイヤーウェルト製法やマッケイ製法でしっかりと縫い付けられたレザーソールになります。外見となるアッパーソールも、安物だと合成皮革ですが、高価なものは頬ずりしたくなるようなカーフでつくられています。とはいえ、明らかに安物の合皮はともかく、一目見ただけで牛革の質まで見極められる人間などそうはいません。英国製やイタリア製のものでなくても、手入れのしっかり行き届いた黒のストレートチップであれば、充分気品はあります。明らかな安物とそうでないもののボーダーは、おそらく20,000円程度かと思われるので、少なくともそのランクのものを選びましょう。バーゲンならもう少し安く手に入ります。ちなみに最初から光沢加工が施されているポリッシュドレザー(ガラスレザー)ではなく、通常のレザーを磨いて光沢をだすのが大人の男のたしなみです。
ちなみに本筋とは少しそれますが、いまはイギリスのEU離脱問題の影響でポンドの価値が下がっているので、個人輸入で英国靴を安く買うことができます。
結婚式用のスーツがないならレンタルで借りればいい
ジャストサイズのスーツとワイシャツをオーダーメイドで作り、グッドイヤーウェルト製法の英国靴を買い、ネクタイなどのフォーマル用アイテムを揃えると、どれだけ買い物上手でも10万円は超えます。仕事でスーツを着る人ならまだ使いみちがありますが、そうでない人はなかなか手痛い出費です。そこで使えるのがスーツのレンタルサービスです。グッチやアルマーニなどの最高級ブランドや、ポールスミスやトゥモローランドなど若者に人気のブランドまで、1万円前後の値段で借りることが可能です。全て発送で完結するDMMのレンタルサービスも手軽でいいですが、実店舗のあるリアルクローズというところなら、試着もできてコーディネートのアドバイスもしてもらえるのでおすすめです。革靴やベルト、ポケットチーフなどもレンタルしているので、なんならこのサービスを使えば、結婚式のスーツの悩みは解決してしまいますね。
姿勢が大事、”何を着るか”よりも”どう着るか”
ここまでの内容でフォーマルスタイルについて勉強し、必要なものを揃え、いざ結婚式に出席したとして、肝心のスーツ着ているあなたの背中が曲がってしまっていては全てが台無しです。20万円のスーツを来た猫背野郎と、1万円のスーツを来た姿勢のいい男だったら、お洒落に見えるのは間違いなく後者です。
「スーツは背中で着る」とよく言われていますが、やはりスーツのシルエットを最大限に活かすのは、伸びきった背筋です。格好良い姿勢をつくるコツですが、背中を伸ばそうとするのではなく、肩甲骨を中心に寄せることを意識しましょう。それだけで印象が大きく変わります。さらにほんの少しお腹に力を込めればパーフェクトですね。当然ですが、披露宴ではテーブルマナーも正しくこなす必要があります。
まとめ
色々と解説してきましたが、もっとも重要なのは、着る本人の姿勢や振る舞い、次に大事なのが革靴ですね。スーツやワイシャツに関しては、サイズさえジャストのものを選んでおけば、高級なものを用意する必要はあまりないです。あとは、当日はあれこれ難しいことを意識しすぎず、心から新郎新婦を祝ってあげればいいのではないでしょうか。